『白い犬とワルツを』
テリー・ケイ著
最愛の妻が亡くなった後、突然現れた白い犬。
息子や娘たちには、姿をみせないのだけれど…。
老人の心理は、自分がその年齢にならないとわからないから、
今の私には理解できない気持ちもある。
でも、この本を読んで心が温かくなるのは、登場人物が
全員、『善意の人』ばかりだから。
いい思い出をもって人生を終わる事ができるのは
幸せなこと。
白い犬が何を象徴するかはあなたが考えてください。
『重松日記』
重松静馬 著
筑摩書房
井伏鱒二の有名な小説『黒い雨』の種本とされるもので、井伏は
これを全部「引き写し」したといわれている。
映画にもなっているので、ご存知の方は多いでしょう。
広島に原爆が落とされた時の惨状を生ま生ましく描いたものです。
通勤途上で被爆した主人公が、妻、姪と共に市内を歩き回り目にした
光景が細かく記述されている。
私は『黒い雨』は小説だと思っていたけれど
実在の人物が、実際に体験したルポルタージュなのだと改めて知りました。
『黒い雨』を先に読み、この『重松日記』と読み比べて見てください。
井伏からの書簡も収録されていて、
どのようにして 『黒い雨』 が上梓されたかもわかります。
『文芸春秋』 2002年1月号(新年特別号)
しいかの好きな雑誌。
文芸春秋は、菊地寛の創刊より80周年記念号として、
特別企画『遺書80人 魂の記録』を特集。
文学者、タレント、俳優、一般人など80人の遺書が掲載されている。
ひとつひとつの遺書の重さが胸にずんと響いてきて
一文読むたびに、考え込んでしまいます。
特に、戦時中、特攻隊の若者の遺書には涙が出てしまいます。
自分の死を意識した時に、人はどんな文章を書くのでしょう。
思いの10分の1も書けないと思うのだけれど。
それだからこそ、文の外にある、いろいろな想いを想像するのです。
この号には、沢木耕太郎の『墜落記』があり、これも興味深いです。
ブラジルで乗っていた飛行機が墜落するという事故にあった著者のルポ。
もちろん、幸運にも軽傷だったので、この文が書けたのです。