『柳寛順(ユガンスン)の青い空』 早乙女勝元 編
草の根出版会
6月は、日韓W杯で日本中が盛り上がっていましたが、これは、かつて、韓国を朝鮮と呼んでいた頃、日本が、韓国にどんなことをしたか、という話。
日本人には知られていないユガンスンは、韓国では教科書にも出てくる、誰もが知っている英雄である。
「韓国のジャンヌ・ダルク」と称されるユガンスンは、70年以上も前に亡くなっていて、伝説化されている。
両腕を切り落とされて死んだ、あるいは投獄されて、拷問を受けて死んだともいわれている。
「日本の植民地時代、1919年、3.1独立運動の際、女学生が、右手に国旗を持ち、『萬歳』を叫んだ。日本兵は剣でその右手を切り落とした。女学生はさらに左手で旗を上げて『萬歳』を叫んだ。
日本兵はまた、その左手を切り落としたが、女学生はなお、『萬歳』の連呼をやめなかった。日本兵はその頭を突き刺し、殺した。」
この女学生がユガンスンともいわれて、銅像も建っているのだが…、この時ユガンスンは16才。
実際に早乙女氏が調べた限りでは、ユガンスンは両親を日本兵に殺されたのち、投獄され、1年間拷問を受けて、獄中死している。
その他、日本公使による、閔妃(ミンピ)暗殺(日本刀で切り殺した)、伊藤博文を銃殺した安重恨のこと、従軍慰安婦のことなど、日本と韓国の暗い歴史が記されている。
韓国ではこういう歴史は資料館で展示されているのだが、日本人は知らない、というか知らされていないのだ。
私達は、まず、事実を知ることが大事である。
早乙女勝元氏は、戦争を題材にした作品が多く、『母と子でみる』シリーズでも、『南京からの手紙』
『ふたたび南京へ』 『アンネ・フランク』 『ターニャの詩』 『アウシュビッツ』 『東京大空襲』 『日本の空襲』などなど、多数あり。
1991年、原作・脚本を手がけた映画に『戦争と青春』がある。
なお、『閔妃暗殺』 角田房子著が出ています。
『精霊流し』 さだまさし 著
♪〜 去年のあなたの思い出が
テープレコーダーから
こぼれています 〜♪
グレープ時代のさだまさし作詞作曲の歌である。
うーん、懐かしい! しいかは最近カラオケに行くとこの歌を必ず歌います。
長崎の精霊流しは見た事がないけれど、歌詞から情景が目に浮かび、物語を想像させます。
この本の主人公、雅彦は、やはりさださんなのでしょう。
生い立ちから、バイオリンを習った話、上京して、アルバイトで生計を立て、デビューしたこと。
長崎の原爆の後遺症で亡くなった身内のことなどがつづられています。
精霊流しの様子もありありと描かれ、悲しいながらも華やかな場面が、爆竹の音と共に映画のように頭の中に映し出されます。
さださんの心の優しさが感じられる本です。
『ある日どこかで』 リチャード・マチスン 著
前に、掲示板で紹介しましたが、映画の内容と原作がごっちゃになっていたため、原作に忠実にご紹介。
自分の余命いくばくもない事を知ったリチャードは(作者本人の名前そのまま。彼が体験した手記という形をとっているため)、車で旅行に出る。
ふと立ち寄ったホテルのラウンジで、えもいわれぬ美しい女性の写真に心を奪われる。
エリーズという、その女性は女優で、調べていくうちに、自分と彼女が過去に出会っていたことを発見する。
本を調べ、過去へ行く方法をみつけ、『想念』を使って60年前の過去へとぶ、リチャード。
そこでエリーズと会い、マネージャーの邪魔にあいながらも、お互いの愛を深め合う。
これから幸せになれる、というその時、現代の1枚のコインが洋服から出てきて、それをみた途端、現代に引き戻されてしまうリチャード。
恋というのは不思議なものである。
何十年も前に亡くなっている人の写真をひとめ見ただけで、恋におちてしまうリチャードと、どこから来たのか、素性も経歴も、性格さえもわからない男に好意をもってしまうエリーズ。
運命の赤い糸、一瞬の出会いでバチバチと電流が流れたように互いに感じあうものなのだろうか。
リチャードのひたむきさと、エリーズの葛藤、とても切ない物語である。
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